肩こり・腰痛外来
はじめに
厚生労働省による国民生活基礎調査の概況(2019年)によると肩こり・腰痛は男女とも最も多い自覚症状の1位・2位を占めています。まさに国民病というべき肩こり・腰痛ですが、正式な病名ではなく、単なる症状名(肩こり症、腰痛症)に過ぎません。これらを生じさせている原因こそが真の病名となりますが、未だ痛みのメカニズムには不明な点が多いのも現状です。
図:性別にみた有訴者率の上位5症状(複数回答)
危険な肩こり
内臓の障害による痛みが肩の痛みとして感じることがあり、関連痛といわれています。通常の肩こりは首を回したり、肩を動かすことで良くなったり悪くなったりという変化がありますが、この関連痛による肩こりは動きによる変化が乏しい、痛むところを押してもさらに痛くはならない、安静にしていても痛みを感じる、冷や汗や嘔気を伴うなどの特徴があります。
代表例は狭心症や心筋梗塞による左側の肩こりや肝臓疾患などで生じる右側の肩こりです。大動脈の血管壁が剥がれる大動脈解離でも肩に張りを感じることがあります。
危険な腰痛
運動器の障害による急性腰痛は良好な経過を取ることが多いですが、内臓疾患由来の腰痛では緊急性の高い疾患が含まれ注意が必要です。運動器障害では腰を動かしたり、重いものを持ったりといった動作で痛みが強くなりますが、内臓疾患由来の腰痛では肩こりのときと同様に動作による変化が乏しい、痛むところを押してもさらに痛くはならない、安静にしていても痛みを感じる、冷や汗や嘔気を伴うなどの特徴があります。
突発的な発症で血圧低下や失神などの症状を伴う場合には、大動脈解離、脊髄梗塞、腎梗塞などの血管系疾患を疑う必要があります。また、急速に下肢の動きが悪くなる、尿意を感じない、尿が出ないなどの症状では脊髄の圧迫が考えられ、緊急検査の対象となります。
その他、尿路系結石、腎盂腎炎などの泌尿器系疾患、膵炎、胆嚢炎などの消化器系疾患、子宮内膜症、骨盤内感染症などの婦人科系疾患、転移性骨腫瘍、多発性骨髄腫などの悪性腫瘍、化膿性脊椎炎、脊椎硬膜外膿瘍、腸腰筋膿瘍などの感染性疾患、リウマチ性疾患などが腰痛の原因となることがあります。
重篤な疾患の合併を疑うべき腰痛の危険信号
発症年齢<20歳
- 腰椎すべり症
- 腰椎分離症
- がん
- 感染
発症年齢>55歳
- がん
- 骨折
- 腹部大動脈瘤
時間や活動性に関係のない腰痛
- がん
- 感染
胸部痛
- 大動脈解離
がん、ステロイド、HIV感染の既往
- がん
- 病的骨折
- 感染
栄養不良、体重減少
- がん
広範囲に及ぶ神経症状、サドル麻痺
- 椎間板ヘルニア
- 馬尾症候群
構築性脊柱変形
- 側彎症
- 後彎症
発熱
- 感染